ストーリー -第6章-

「19世紀から飛ばされた俺は気がついたら森の中にいた。俺はしばらく森をさまよっていた。」
久枝は語り始めた。
「しかも俺はいつの間にか還元されて久になっていたんだ。
ただでさえ今までの戦いでカオスのエネルギーを消耗していた俺はこの森で死を覚悟した…。」
久枝は暗い森をただただ走っていた。あたりは驚くほど静かだった。何時間か走っていると、少し開けた土地に出た。助かったと思ったのもつかの間、突然どこからともなく矢が飛んできた。
久枝は必死で自分は敵ではないと叫ぶと、矢を放ったと思われる一人の男が近づいてきた。
「俺はとっさに茂みに隠れた。そして様子を伺っていた。そしたら・・・
佐藤。
お前にそっくりな男が現れたんだ。」
男はしばらくあたりを見渡すと、久枝に気づかないのか、去っていってしまった。久枝はホッと安心して立ち上がった。すると、真後ろから突然声が聞こえた。振り返ると、そこには鋼鉄の鎧を着た戦士が立っていた。顔は暗くて見えなかったが、どうやらさっきの男とは無関係で敵対意志はなく、若い女性の声で「ついてきて。」とだけ呟くと暗闇に消えた。
「女について行くと、女の家らしき場所に着いた。そして女は俺に温かいスープと食事を用意してくれた。それはとても美味かった。気がついたら俺は久枝に戻っていた。」
「先に沈黙を破ったのは女の方だった。
『凄い回復力なのね…。あんなに酷い還元だったのにもう回復するなんて。
「ああ。ところで、さっきの男は何なんだ?ここは一体?」久枝はとりあえず思ったことを口にした。女は何も知らないのと呟くと、しばらくたって語り出した。
「あの男はColossusといって、ここら一体を支配下に治めようとするヴァル軍のリーダーよ。」女は静かに話した。
すると女は逆に質問してきた。
「あなたはいったい何者なの?この辺りでは有名なあの男の事も知らないで、その上あんな状態でいたなんて。」
久枝は「誰でもえぇじゃないか!」とキレ気味に答えた
すると女は意外な反応をとった。
「アンタねぇ…
助けて貰った人に対して礼も言わないで、その態度は何なの!!」
「もういい。世話になったな。」久枝は家から出ようとした。女はちょっと戸惑い気味だったが、久枝には関係なかった。
その時、扉がおもむろに開き、男がゆっくりと入ってきた。すると女は、「おかえり、ヒックイーノ」と言った。
「何・・・だと・・・?!ヒックイーノ・・・だと・・・。」久枝は女が言ったその名に驚き立ち止まった。
どことなく自分に似た面影を持つその男を見て、彼が久枝ヒックイーノである事を悟った。
「ああ、今、ヴァル軍の偵察に行ってきた。奴ら、ここ2,3日で何かでかいことをやらかすみたいだな。それはそうと、そこにいる俺と似てるやつは誰だ?」ヒックイーノは女に質問した。
「森に倒れていた謎の男よ。」女は簡単に説明した。
「ふむ…」
ヒックイーノは少し何かを考え、こう切り出した。
「君、名前は?」
久枝は考えた。ここで自分の名前を言ってもいい。だが、それだと歴史を狂わしかねない。散々考えた上、こう名乗った。
「俺の名前は、ジョン・スミス。」
女「私の名前はナターリア・シミョノヴァよ」
と女は言った。
「ナターリア、君の名前は知っているよ・・・」
何故か自分の名前を言ったナターリアにヒックイーノは言った。
ナターリアと名乗った女は、
「じゃあ、私の名前を言ってみて?」
と言い出した。
久枝はなんでそんな事を言うのか、よくわからなかった。
するとヒックイーノは
「ナターリア・シミョニョバ……シニョミョ…シ…シニョ…シミョニョヴァ!」
ナターリアは呆れた顔で、
「ほら。もう忘れてる…」
と言った。
ヒックイーノは
「ごめんよ、ナターリア…」
と言ってナターリアと名乗ったその女を抱きしめた。
久枝はその様子をただ呆気に取られて見ていた。ヒックイーノとナターリアは久枝がその場にいることを忘れていたが、ふと思い出したのか、突然離れた。
久枝は「とにかく詳しく説明してくれないか?」と聞くと、ヒックイーノはゆっくりと語り出した。
「・・・ん?何を説明すればいいんだ?色々と聞きたいのはコッチの方なんだが・・・。」
ヒックイーノは久枝が何の説明を求めているのかわからなかった。
久枝は
「聞きたい事は山程あるが…取り敢えず、ヴァル軍と、ヴァル軍がやろうとしている事…、それとアンタが何者かって事を聞かせて欲しいな。」
と答えた。
「私達は、昔からこのあたりに住んでいたミニカ村の村民だ。それが、最近になってヴァル村がここをヴァル村の占領下にすると言い出したんだ。Colossusはそのヴァル村のトップだ。最強の戦士の名前を欲しいままにしてて、武勇伝は数知れずって奴だ。今までも、あいつがいたから数々の村が滅ぼされたと言われている。」
「じゃあ、勝ち目ないじゃないか。いっそ降伏すべきじゃあ…」
久枝が言うと、ヒックイーノは力強く否定した。
「駄目だ!俺達はあいつにこの村を渡すわけにはいかない。ここには、代々伝わる守護神がいるんだ。それはここらを守っているとされ、有事には強力な力でまもってくれるとされている。だから俺は、とある錬金術師にたのんで、魔剣をつくってもらったんだ。伝説によると、魔剣に守護神が乗り移るとされているんだ。だが、残念ながら、まだその力は、現れていない。でも、俺達は必ず守ってくれると信じている!」
そう言うと、ヒックイーノは魔剣を久枝の前に突き刺した。
同時に久枝は驚いていた。
(これ・・・は、一族に伝わる・・・ヒゲ男の剣!!やはりそうか・・・、俺の感は間違っていなかった・・・。)
だがこの魔剣からは、ヒックイーノが言うように、あの魔剣のような力を感じることはできなかった。
久枝は考えた。
(ヴァル軍はここ2~3日の間に「何か」をしようとしている…。恐らくはミニカ村、いやヒックイーノの抹殺だろう。
しかし、俺が知る限り勝つのはヒックイーノ。
Colossusがどれ程の能力を持つのかは分からないが、あの魔剣、ヒゲ男の剣を使えば負ける事は無いはず…。
だが、ここにある剣はタダの切れ味の良い剣…。
見た目はヒゲ男の剣そのものだが、一体どういう事なんだ…?)
「それより、君のことを教えてくれないか。こっちは話したんだ」ヒックイーノは思い出したように言った。久枝はなるべく歴史を狂わさないように言った。
「私は、実は何千年も先の未来から来たんです。訳あって、なぜかこの世界に来てしまいました。詳しいことは言えませんが、あなたの中にあるパワーを解放すれば、その剣は覚醒するでしょう。」
するとヒックイーノはこう言った。
「詳しいことは言えないのか・・・。ならせめて、3つの質問だけにでも答えてくれ。
1つ目は、君は敵なのか味方なのか?
2つ目、なぜ君はこの剣の事を知っているのか?
そして3つ目、君の・・・本当の名前を教えてくれ。」
(なぜ…俺が偽名を使ったと分かったんだ?
まさか、ヒックイーノには人の心を見抜く力があるのか!?)
だが、これ以上下手に喋ると歴史を狂わしかねない。
久枝は慎重に考えながらこう答えた。
「一つ目は…俺は未来から来た人間だ。歴史を変えるわけにはいかないから敵でも味方でもない。
二つ目は、俺は未来でその剣の真の姿を見た事があるから知っている。
三つ目は……
久枝は少し間をおいて言った。
「三つ目は、本名だ。」
ヒックイーノは不思議そうな顔をしたが、「そうか。」とだけ言った。
「・・・残念だ。ナターリア、そろそろ行こう。」
そう言うと二人は外へと行った。
「何処へ行くんだ?」
久枝はヒックイーノの背中にこう呼び掛けた。
「我々の村だ。君もついてきたかったらくるといい。」ナターリアは心配そうにヒックイーノを見たが、ヒックイーノは振り返らずにそういうと、入ってきた扉から去った。
ナターリアはヒックイーノに話しかけた。
「あの自称、ジョン・スミスとかいうヤツのことどう思う?」と。
「心配いらないさ。彼からは悪意は感じられないから。
ただ…彼は何かを隠しているんだ。ナターリアが不安になっているのは、そのせいだと思う。」
ヒックイーノはそう答えた。
ヒックイーノ達がミニカ村に向かっている頃、Colossusは一人、ヴァル軍本部に程近い山中に向かっていた。彼はヴァル軍でも誰一人として知らない誰かと極秘にあっており、噂によるとColossusを指揮しているのはその人物とされていた。
Colossusは山の中腹にある寺院に行くと、中に入り、姿が見えない闇の中の人物に向かってこういった。
「予定通り、彼が現れました。」
「そうか、お前はそのまま予定通り行動していてくれ。そして、何かあったら連絡を。」そう言うと謎の人物の気配は消えていった・・・。
「仰せのままに…。」
Colossusは消えゆく影にそう答えると、
「フフ…!これで計画は第3段階に移る…。
我々の計画に歯向かう者がどうなるか…教えてやる。」
と呟いた。
それから一週間が経った。
久枝はミニカ村で村人らととても仲良く暮らしていた。戦闘もなく、とても平和な日々がつづいていた。だが、ある日、ヴァル軍が大きな攻撃を仕掛けるらしいという情報が入った。
その攻撃予定日の前夜、ヒックイーノはナターリアと久枝を自分の家に呼んだ。
「よく来てくれたね。ナターリア、ジョン。君たちも知っての通り明日、ヴァル軍が攻めてくる。私Colossusと決着をつけに行く。君たちには戦えない者たちを安全な場所まで連れて行く指揮をとってほしい。」ヒックーノは言った。
「イヤよ。私も連れて行って。
私もヒックイーノと一緒にヴァル軍と戦うわ!」
ナターリアは声を荒げた。
「君の気持ちもわかる。だが、ジョンが戦闘に参加してくれる今、できるだけ被害を増やしたくないんだ。特に君を失うわけにはいかない。」ヒックイーノはナターリアを説得すると、ナターリアはなんとか「わかった」といった。
ヒックイーノは改めて久枝の方を向くと、こう切り出した。「それで、明日の作戦なんだが…」
話し合いは深夜にまで及んだ。

翌日。
ドッカーン!!
ドドドドドドドドドド

ヒックイーノ・ナターリア・久枝「!?」
・・・
ヒックーノ「しまった!なんてことだ!!我々が寝ている間に戦いが始まってしまった!」
ヒックイーノ達が慌てて外に出ると、辺りは火の海になっていた。
「しまった…」思わずヒックイーノはそういった。その瞬間、久枝の後ろでナターリアの悲鳴が聞こえた。振り返ると、火のついた矢がヒックイーノを後ろからさしていた…

そこで、久枝は目を覚ました。あたりを見渡すと、まだ日の出前だった。
「嫌な夢をみたな…」久枝はつぶやいた。

早朝になり、三人は村の連中をつれて、それぞれの持場へついた。ナターリアは村の女子供を連れて、遠いウブンツ村まで旅だった。村の男達は戦闘着に着替え、きめられた位置についた。しかし、久枝とヒックイーノはふたりだけ離れたところにいた。
「さて、時間がない。はじめようかジョン。」
そう言うと、ヒックイーノはあの魔剣を手にとり修行をはじめた。
そう・・・、ヒックイーノはまだ、魔剣の真の力を引き出すことができていなかったのだ。
その様子を見ながら、久枝は考えていた。自分がヒックイーノに協力する事は本当に正しいのかどうか、と。
しかし魔剣の力を引き出し、そのカオスのパワーで未来に戻る事ができるかもしれない…
そう考えてヒックイーノに協力する事にした。
一方その頃、ミニカ村では、火の見櫓に立っていた村人が何かを見つけると叫んだ。
「奴らが来たぞ!!」
村人は各々の武器を取ると、村の入り口にある広場に集まった。ヒックイーノから直々に戦闘の指揮を任されていたマイケルという青年は、振り返り、村人に「ここは必ず守るぞ!」と叫ぶと、雄叫びをあげながら敵軍に突っ込んでいった。それが合図となり、村人も続いた。
しかし、マイケルという青年は指揮をとるには若すぎた。
何も考えず、敵軍に突っ込むなんて・・・。
先陣をきったマイケルは、ヴァル軍の妖術師の放った怪しげな光弾をまともに食らい、消滅してしまった!
周りにいた人間は思わず息をのんだ。しかし、消えたのではなく、さっと避けただけだった。しかしながら、彼は、ヒックイーノが早く作戦を実行しない限り、ここは長くは持たないな、と感じていた。
ダダダ・ダダダ・ダダダ
ヴァル軍の妖術師達は無数の光弾を放ってきた。
「ツォォォォォッ!!」
マイケルは叫んだ!
するとマイケルの体から光が広がっていった。
その光はヴァル軍の妖術師の放った光弾とぶつかりあい、ミニカ村の住民を光弾から守るバリアとなった。

しかし、光が消えた後に、マイケルの姿は無かった…。
代わりにいたのは、子供の姿になったマイケルだった。
周りの戦士が慌てて本部まで連れていった。
他の戦士は驚きを隠せないようだった。

その頃、ヒックイーノと久枝はヴァル村本部のColossusの元を訪ねていた。
Colossusは二人が近づくと、「来ると思っていたよ」と静かに言った。
colossusのその声に合わせ、数十人のヴァル軍戦士がスッと現れた。
「なるほど・・・、歓迎の準備はしていてくれたのか。」ヒックイーのが言った。
ヒックイーノは魔剣を構え、深呼吸をした。
それを見たColossusは
「良いモノを持っているな…。だが、果たして貴様に使いこなせるのかな…」
と呟いた。
その時だった。奥から部下が走ってきてColossusに何かを呟いた。それを聞いたColossusは軽く舌打ちすると、ヒックイーノを向き、「君との戦いはまた今度にしよう」といった。
ヒックイーノは「待て、どういうことだ!」と叫んだが、Colossusは「全面撤退!」と叫びながら暗闇に消えていった。
「くっ!!いったい何なんだ!?」ヒックイーノはイラついている。
「落ち着け。ヤツらの様子から察するに、きっとイレギュラーな事が起きたんだ。それにコレはチャンスだ。ここはヤツらの本部。そしてヤツらはここにいない。この意味がわかるな?」久枝は冷静に言った。
ヒックイーノは一瞬喜んだ。しかしすぐに表情が曇る。
ヒックイーノは思わず口にした。
「罠…か?」
本部とは名ばかりで実はオトリだった。よくある手だろう。
それだけでは無い。Colossus達の行き先も気掛かりだった。
ヒックイーノの脳裏にはマイケル達、村人達…そしてナターリアの事が過る。
ヒックイーノ達は本部を調べはじめた。すると、Colossusへ向けた指令書のようなものを見つけた。
「何だ…これは…??」
ヒックイーノと久枝は思わず呟いた。

その頃、Colossusは謎の人物の元を訪ねていた。
「急に撤退なんて、どういうことですか!?」
すると謎の人物はこう言った。
「戦略的撤退だ。ヤツの力が大幅に増していた。作戦を変える。」
Colossusは奥歯を噛み締め、こう口にした。
「ヤツの力が増した…?
まさか、ヤツの剣ですか?
ヤツごときに使いこなせる代物だとは、到底思えません。」
「いや、あの隣の男だよ。あいつの影響でヒックイーノの覚醒が近い。覚醒してしまうと、我々に勝ち目はない…」
そういうと、2人は黙った。そして、しばらくしてColossusが言った。
「では、あの男をここに連れてきます。」
「まてっ!早まるな!」
謎の人物は珍しく声を荒らげたが、すでにColossusの姿はなかった。
Colossusの気配が消えた事を確認すると、謎の男は椅子に深く腰掛けた。
そして、静かに、微笑んだ。
その夜、ヒックイーノと久枝とナターリアは、Colossusの指令書と子供になってしまったマイケルと共に会議をしていた。
ナターリアは指令書を読むと、静かに口を開いて言った。
「これは多分、『魔王』からの指令書じゃないかしら。
「魔王・・・だと・・・!?」久枝が答えた。
だがヒックイーノは
「ちょっと待ってくれ、お前は誰だ?」と言った。
ヒックイーノは子供に尋ねた。
子供は答えた。
「オレはマイケルだ。ヴァル軍の怪しげな術でこんな姿になってしまった。
そんなことより、魔王ってなんなんだ…。」
ナターリアは言った。
「ヴァル村はそもそも私達となんらかわりない小さな村だったの。Colossusも村人に愛される青年村長だった。でも、数年前、突然として彼は巨大な軍を配備して、周りの村を支配しはじめた。でも、その頃から、彼がなんらかと契約を結んだっていう噂があるの。理由はわからない。でも、その人物が、魔王と呼ばれ、彼が影のヴァル軍のリーダーだと言われているわ。」
「ふーむ、魔王か。そいつは確かに怪しいな。」
そんな事をヒックイーノが言っていると、
「ん?」
ドゴォーン!
Colossusの奇襲が久枝を襲った。
子どもにされていたマイケルはどこかへ吹っ飛んでしまったが、他はなんとか奇襲攻撃をかわす事ができた。
「くっ…一時退却だ!」
ヒックイーノは叫んだが、辺りを見回すとColossusの近衛兵に囲まれているのが分かった。
その時だった。催涙弾ようなものが投げ込まれ、あたりは煙につつまれた。ヒックイーノ達は次第に意識を失った…。

気がつくと、ヒックイーノは牢屋のようなものにいれられていた。見渡すと、久枝とナターリアも一緒にいた。
「おっ、おい!大丈夫か!?」
ヒックイーノは久枝とナターリアの方へ行った。
ヒックイーノ達はお互いに無事を確認しあった。
「ここは一体…」
久枝は呟いた。
すると、何者かが鉄格子の向こうに現れた。
Colossusだった。ヒックイーノをみながら、「気がついたか」と言った。
「これはどういうつもりだ!」
ヒックイーノは叫んだ。
Colossusは答えた。
「どうもこうも…我々の計画の障害となりうるものは全て排除する。それだけだ。」
そういうと、Colossusは部下に指示を与えた。
すると、彼の部下とみられる数人の兵士が入ってきて、ヒックイーノを連れ出した。
3人は激しく抵抗したが、Colossusの手下は大変手際よく連れ去っていってしまった。
と思いきや、Colossusの部下たちはヒックイーノの敵ではなかった。
カオスパワーのコツを掴み初め、ヒゲ戦士として覚醒が近づいているヒックイーノは部下たちをホォワ!と、ふっ飛ばした。
Colossusの表情が一瞬曇る。
つい先日まで大した能力を持っていなかったヒックイーノが、下っ端とはいえ訓練された兵士を魔剣もなしに軽々と退けたのだ。

ヒックイーノ自身も驚きを隠せなかった。
ヒックイーノだけではない。ナターリアも驚いていた。
一方その頃、ミニカ村では、とらえられた村人達が脱出を試みていた。村人たちはみんなで考えを巡らせたが、前回とは比べ物にならないくらいの大人数のヴァル軍に囲まれているため、頭を悩ませていた。
その時だった。牢屋の鉄格子の付近で遊んでいたマイケルが、偶然、鉄格子から出てしまったのだ。
そんな時、村人同様ピンチであったヒックイーノ達の戦況は変わりつつあった。

「今のが…ジョンが言っていた、魔剣を使いこなすのに必要な力…」ヒックイーノが呟き
「そう。それがカオスパワーだ!!」と久枝は叫んだ!
「ぬぅ……もう一度眠らせてやろう…今度は永遠にだ!!」
Colossusはそう叫ぶと、巨大な光弾を作り出し、ヒックイーノ達に放った。
あまりの早さにヒックイーノは避けることができなかった。
「フッ」
Colossusは辺りに舞う土埃をみて、勝利を確信していた。ヒックイーノさえいなければミニカ村は取ったも同然だと思った。しかし、次の瞬間、彼は驚愕した。
なんと、彼の攻撃を鍵を探すため偶然通りかかったマイケルが防いでいたのだ。彼は攻撃により大人の姿で既に死んでいたが、久枝はそれをみて、ヒックイーノの覚醒に足りない要素に気づいた。
久枝は静かに口を開いた。
「そうか、そういう事だったのか…。」
「ヒゲだッ…!!」
「ヒックイーノ、剣を…、魔剣を取ってくるんだ!早く!」
久枝は叫んだ。
ヒックイーノは頷いた。
しかし…
「させるか!」Colossusはその行く手を遮ろうとした。
「ここは俺が相手をしてやる」久枝は静かに彼の前に出てきた。
Colossusは静かに笑うと言った。
「忘れているようだが、力を持っているのは、何もあいつやお前だけではないのだぞ。正直言おう。私は…、強いぞ。」
「ジョン!ここは任せた。すぐに戻ってくる!」
ヒックイーノはそう言うと走っていった。
ヒックイーノが走っていくのを見届け、久枝は口を開いた。
「フッ、お前は強いのか…。だが、問題はない。なぜなら俺も…強いからなっ!!」
そう言うと、辺りの空気は一瞬にして変わった。
「!!」
久枝はColossusのカオスのパワーを全身で感じ取った。
これ程の力を感じたのはヒゲのヒトとの戦い以来かもしれない。とさえ思う程だった。
「フッ…修行の成果を試すには丁度良いな…!」
久枝はそう言うと、自身を酸化させた。
久枝はカオスパワーを体外に放出することで音速を超えるスピードでColossusに近づいた。
しかし、驚くことにColossusも同様のスピードで避けていた。
しばらくの間二人は目に見えないスピードで動き続けたが、
意味をなさないことに気づいた。
「2人とも同じ速度で動けるなら、普通に戦うのと同じじゃないか…?」と久枝が呟くと、Colossusは
「…それもそうだな…。」と言った。
「だが…これが俺の最大スピードだと誰がいった?」
次の瞬間、Colossusは更に速い速度で久枝に襲いかかった。
Colossusは猛スピードで突撃してきたが、久枝はとっさにATフィールドを張っていたのでなんとか大丈夫だった。
すると、Colossusの動きを見て、久枝はある考えが浮かんだ。彼の動きは確かに常人ではないが、ヒゲ戦士の動きではなかったのだ。久枝は一か八か、ヒゲリックスを展開することにした。
久枝はColossusと距離を取り、カオスパワーパワーを集め始めた。
Colossusは急に距離を取り、動きを止めた久枝を見て、好機と思い久枝に攻撃をしかけた。
その時だった。
「ヒゲリックス…、展・開!!」
久枝にとって久し振りのヒゲリックスだったが、久枝は修行の成果でそのヒゲリックスを進化させていた。
久枝のヒゲリックスの影響でスマブラX方式での戦いとなった。

久枝はW!!リモコンを構え、Colossusに向けて大きく振った!
しかし、Colossusも負けてはいなかった。
ヒゲリックスとは異なる力で中和し始めたのだ!
Colossusは叫んだ。「出でよ!箱丸!!」
「バカなっ!箱丸だと!?」
久枝は驚きを隠すことができなかった。
なぜなら箱丸は、久枝がいた時代に開発されたものであり…今…この時代に存在するはずがないのだから…。
久枝は続けた。
「ますますお前が何者なのか分からなくなってきたぞ…
箱丸はこの時代のモノじゃないんだ…お前はこの時代のモノではない力をもっている…それなら、その強さも納得だ…。」
箱丸の高画質には、それ以上の最新技術で対抗するのが一番だ。
久枝はそう考えた。

「本気でいかせてもらうぞ!!
『デスフルポリゴン・3D』!!」
空間を切り裂くように巨大な銀色の球体が現れた。すると、みるみるうちにするか緑色のバツの切り込みが入った。箱丸は変幻自在の物体で、気が付くと切り込みからレーザーが発射されていた。
久枝がデスフルポリゴン・3Dを発動するよりも速く、clossusは箱丸を発動していた。
普通の状況なら箱丸はデスフルポリゴン・3Dを上回っていただろう。
だが、ここは違う。
ここは、久枝のヒゲリックスが展開された空間。
デスフルポリゴン・3Dはヒゲリックスと合わせることで恐ろしい攻撃となる。

普通の空間ならデスフルポリゴン・3Dは単なる目の錯覚であり虚仮威しにしかならない。
だが、ヒゲリックス内なら錯覚であった3Dオブジェクトは物質化する。
そして、恐ろしいのはヒゲリックスが展開されている限り、その数に限りはないのだ。
さらに久枝はWiiリモコンで任意のオブジェクトを自由に動かすこともできる。
久枝はW!!リモコンを構えた。
するとシールドが発生し、レーザーを防いだ。
更に久枝は素早くW!!リモコンを振った。
すると緑色の服を着た剣士が実体化し、Colossusに切りかかっていった。
しかし、Colossusは意外にも余裕の表情を浮かべていた。
球体だった箱丸が驚くべき早さで変形を始めていた。
久枝と剣士は一度退いて様子を見ていた。すると、変形した姿に久枝は驚愕した。
そこには、銀色のヒゲのヒトが立っていたのだ。
「何なんだ…あれは…!?」
久枝は戸惑いながらも剣士に攻撃を命じた。
同時にW!!リモコンを振り次のアクションのコマンドを入力し始めた。
その瞬間、銀色のヒゲのヒトは腕を軽く振った。
すると、触れてすらいないのに緑色の服の剣士は吹っ飛ばされて消滅してしまった。
さらに銀色のヒゲのヒトは間髪を入れずに、攻撃を続けた。
久枝に向けて腕をのばし、カオスの波動をぶつけた。
大したダメージではなかったが、久枝がコマンド入力を断念するには充分だった。

久枝は考えた。
「(まさか…コピーしているのは姿形だけではないというのか!?)
…ハッ!!」
銀色のヒゲのヒトは、久枝にも見覚えのある構えをしていた。
「あの構えは、まさか―」
「サウザンド・ヒゲ・オブ・マスター!!」
ヒゲのヒトは一瞬ですべてを解き放った。
それでも無表情のヒゲのヒトの後ろでColossusは静かに笑っていた。
「あっけないものだったな。」
しかし、Colossusは忘れていた。
久枝が唯一の「サウザンド・ヒゲ・オブ・マスター」からの生存者で
あるということを。
ヒゲのヒトがそれを放つことは十分に予測できたことを。
砂煙が消え去ると、久枝は立っていた。
しかも、久枝はそれを右手一本で防いでいた。
「バ…バカなっ!!」Colossusはあの一撃で久枝を仕留めると思っていた。
だから、驚きを隠せない。
たから、攻撃の後の事など考えていなかった。

「混沌殺し(カオスブレイカー)…」
久枝は静かにそうつぶやくとColossusへ向かって全力で駆け出した。

「ヒ、ヒゲのヒトっ!!」
Colossusがそう言うと、ヒゲのヒトが久枝の前に立った。
だが、「邪魔だ!」と久枝が右手で殴ると、ヒゲのヒトは消え去ってしまった。
「よく出来たコピーだったが所詮は幻影だ。
幻ごときで俺は倒せない…!」
久枝は消えゆくヒゲのヒトを見てそう呟いた。
「次はこっちの番だな…」
そういうと、久枝は両手を大きく広げ、カオスパワーを最大限までため込んだ。
「これが俺の…全力だぁ!!!!!」
久枝オリジナル奥義・風神雷神Ⅱを発動させた。久枝は体内のカオスパワーを電撃に変換し、人工の雷雲の発生させ、雷を自在に操ったのだ。
Colossusは発生する雷をなんとか箱丸で吸収していた。
しかし、
「ぐ、ぐぉ」
久枝の風神雷神Ⅱは箱丸のキャパシティーを遥かに上回っていた。
風神雷神Ⅱのエネルギーに耐えきれなくなった箱丸は大爆発を起こした。

久枝はそれを見て勝利を確信した。
しかし爆風の向こうに立っていたのは無傷のColossusだった。
「な…に…!」
そう口にした久枝をよそにColssusは話を始めた。
「フフフ…さすがに驚いていただけたようだ…。
だが、驚かされたのは私の方だ。
まさか箱丸こうも簡単に退けるとは。
実は昔の君の力量に合わせていたのだ。君はヒゲ戦士の中でも成長が早いと聞いていたが予想以上だな。
久し振りに良いデータが取れた。次にまた会えるのを…楽しみにしている。」
「そうはいかないんだな。」

Colossusはまさかと思い、あわてて振り返った。
そこには、剣を持ったヒックイーノの姿があった。
「この村は俺が守る。そして、村を脅かすお前は俺が倒す!」
そう言ってヒックイーノが剣を抜いた。剣はわずかながら赤くなっていた。久枝はその様子を見て、ヒゲ戦士になるためのヒックイーノのカオスパワーがかなり充電されてきていることを感じた。
ヒックイーノが剣を振ると、猛烈な突風が吹いた。それを見たColossusは、初めて危機感を覚えた。
「遅いじゃないかヒックイーノ!!」
「すまない。魔剣を探すのに時間がかかった。だが、遅くなった理由は別にあるんだ。」
「なんだ?」
「実は戻ってくる途中でヴァル村のヤツらが足止めをしてきて面白い事を言ったんだ。「Colossusさんを助けてくれ。」ってな。」
「いったいどういうことだ?」
「ああ、俺も気になって聞き出したところ、どうやらColossusは妖術師…俺たちが魔王と呼んでいるヤツに操られているらしいんだ。Colossusが首から下げている黒耀石のアクセサリーを見てくれ。あれは妖術師からもらったものらしい。Colossusはそれを誰にも触らせようとしなかったらしい。恐らくあれに何か秘密があるのだろう。」
「あのゴミどもめ…余計な事を。」
Colossusの表情に焦りの色が見える。
ヒックイーノが魔剣の力を引き出すのが予想より早かったのだ。
まだ未完成とは言え、“ジョン”の力も加われば、ただではすまない。

「よし、あのアクセサリーを破壊する!」
久枝は叫ぶと同時にW!!リモコンを振りかざした。

「仕方ない…。この石の力を使う時が来たか…。」
Colossusはそう呟くと、黒曜石のアクセサリーを飲み込んでしまった。
Colossusは急に苦しみだした。
全身が火のように熱くなり、その熱気は距離をとっていた久枝達にも十分伝わるほどだった。
彼はは苦しみながら叫んだ。
「これが私の、真の姿だ!」
と、同時にとてつもなく大きなうめき声をあげた。
すると、あたりは嘘のように静かになった。
Colossusは人間の姿を捨てた。そこにいたのは、Colossusではなかった。
久枝はつぶやいた。
「お前… まさか、酸化したというのか!」
「酸化…だと…?酸化などではない。酸化を超えた酸化…、
超酸化だっ!」
!!
Colossusはそう言うと、ビームのようなものを撃ってきた。

ドゥォゴォォン!!

「ちっ、外したか。まだなれてないからな。」

久枝とヒックイーノのは後ろを見て驚愕した。
さっきまであったはずの山がなくなっていたのだ。

そして久枝は驚きだけでなく懸念があった。
(マズいなあの攻撃…。なんて威力だ。世界に満ちるカオスパワーのバランスが崩れかけている…。このままでは時空にも…。)

久枝がそんなことを考えているうちに、Colossusは二撃目をヒックイーノに向けて放とうとしていた。

「ヒックイーノ逃げろ!!早くするんだ!」久枝は必死に叫んだ。
だが、ヒックイーノは圧倒的力に恐怖し、動けないでいた。

「くっ」
久枝はもてるカオスパワー全てを制御し、ヒックイーノの前へ向かった。

ヒックイーノはもう死んだと思った。
「みんな、すまない…。」





だが、ヒックイーノは死んでいなかった。
ヒックイーノの目の前には右手で攻撃を防いでいる久枝がいた。

「ジョ、ジョン。どうして…」
「どうして…だと?オレにはヒックイーノ、お前に死なれちゃ困るんだよ。だが、そんな事はどうでもいい。(右手が圧されてる…。)ぐ、ぐぉ」
「ジョン!」
「一つだけ答えろヒックイーノ!お前は、みんなを守りたくないのかよっ!」
「!!」
「なんの為に剣を手にした?みんなを守るためだろ!お前一人だけが恐いわけじねぇんだ。いいかげん、本気出そうぜヒックイーノ。ぐぉ、ぐぅ」
すでに久枝のヒゲリックスは崩壊し、久枝は酸化状態を保つだけのエネルギーを消耗し、全身が還元され「久」に、いや、「ク」になりかかっていた。立っているのも限界に近い。
最後の力を振り絞って、久枝は叫んだ。
「みんなを守れるのはお前だけだ…!立てっ!ヒックイーノ!!」

ヒックイーノは立ち上がった。
「そうだったな…」
ヒックイーノは静かに目をつぶり、精神統一を始めた。すると、剣がみるみるうちに燃え始めた。
「あとは… 任せた…」
そういうと久枝はヒゲリックスを解除し、気を失った。

ヒックイーノは自分の体内になんともいえぬ不思議な力が湧き上がってくるのを感じていた。そして、それが極限にまで達したとき、ヒックイーノは動いた。

「なん……だと……!」

Colossusは思わず口にした。ヒックイーノの動きが全く見えなかったのだ。見ると、腕から血が出ていた。
超酸化状態の自分にかすり傷を負わせた者は今まで一人もいなかったので、かなり焦った。
ヒックイーノの攻撃は止まなかった。
目にも止まらぬ速さで攻撃をしてくるヒックイーノにColossusは何もできず、倒れかけた時、Colossusは最後の悪あがきをした。

倒れている久枝に攻撃を仕掛けたのだ。
クになって気を失っていた久枝は、避ける事はおろか動く事すら出来なかった。
しかし、ヒックイーノが剣を縦に構えると巨大なエネルギーの壁が現れ、Colossusの放ったビームの様な攻撃を跳ね返した。
「素晴らしい。よくやった。」
すると突然後ろから拍手とともに声が聞こえた。全員が一斉に後ろの暗闇に目を向けた。
暗闇から一人の人物が現れた。般若のお面をかぶり、頭までフードをつけているので顔はわからなかった。
するとColossusが言った。
「申し訳ございません、魔王。手間をおかけしてしまって。」
「魔王…だと…!?Colossusを操っているヤツか!!」
そう言うとヒックイーノは魔王へ切りかかった。
「操っているだなんて、私はただ力を与えただけ…」
魔王はそう言いながら、障壁を発生させた。

ヒックイーノの攻撃は弾かれた。しかしヒックイーノは連続で斬りつけ続けた。その時、さりげなくColossusにカオスパワーの斬撃を放っていた。
しかし、ヒックイーノはまだカオスの力に慣れていなかったためか、攻撃に夢中になっていたためか、普段のような冷静さを失っていた。
魔王の出した障壁が徐々に広がっているのに気付けなかったのだ。

ヒックイーノが気付いた頃には、障壁はすでにヒックイーノを囲むように広がっていた。
すると、どこからともなく声が聞こえた。
「パワーを… カオスパワーを放て。」
ヒックイーノが見ると、声は剣から聞こえていた。
ヒックイーノは目を閉じ、両手を広げ、目を開けた。
障壁が一斉に消え、そのパワーによりColossusは飛ばされて
気を失ってしまった。
「素晴らしい。これほどのカオスパワーを私はこれまで感じたことはないでしょう。」
魔王は冷静を装っていた。
「さあ、もっとその素晴らしいカオスパワーを私に見せてください。」
魔王はヒックイーノを挑発し、カオスパワーを放った。
「ハッ!!」
ヒックイーノは剣を振り、魔王のカオスパワーを振り払った。

さらに剣にカオスパワーを貯め、剣を魔王に向けた。
「サウザンド・ヒゲ・オブ・ブレード!!」
巨大なカオスエネルギーの刃が魔王に襲いかかった!
しかし、魔王は片手で見えない障壁を作り、それを防いでいた。
「こんな短期間でよくここまで成長したな、ヒックイーノ。しかしな、今のお前には私を倒すことはできん!」
そう言って魔王は手を押し出すように振った。すると、ヒックイーノはかなり後ろまで飛ばされてしまった。
「アナタの役目はここで終了です。死んでもらうとしましょう。」
「何…だと…!?いったいどういうことだっ!?」ヒックイーノは立ち上がりながら叫んだ。

すると魔王は
「まだ気付かないのですか?アナタは…いや、アナタだけではない。Colossusも、久枝も、全ての者は私の掌で踊らされているのですよ。私が…ヴァルデミニカへ向かうために。」
と言った。

「ヴァルデミニカ…だと?いったい何なんだそれは!?」

「いいでしょう、冥土の土産に全て話してあげましょう。
本来の私の計画ではヒックイーノ、アナタはもっと時間をかけてここまで成長させるはずでした。」

「何…だと…?」

魔王は続けた。
「しかし私の計画は未来からやってきたヒゲ戦士、久枝によっていい意味で狂い始めたのです。」

「未来からやってきたヒゲ戦士、久枝…。ハッ!ジョンのことか!」

「その通り。久枝はジョンと名乗り、アナタを鍛えた。これには私も驚きましたよ、計画では半年程かけて強くする予定を久枝は一ヶ月もかけずにここまで強くしてしまったのですから。
そして先程のClossusとの戦い、二人の膨大なカオスパワーにより世界のカオスパワーのバランスが崩れ、そして今」
そう言うと、魔王は空のある一点を指差した。

「私とアナタのカオスパワーの衝突により、ヴァルデミニカへの扉が開かれたのです!」

ヒックイーノは空を見た。
ヒックイーノの頭上には何かが広がっていた。
しかし、ヒックイーノには一体何が起こっているのか理解できなかった。
「なんだアレは…!
あれが…あれが、ヴァルデミニカなのか…!」

魔王は答えた。
「いいえ、あれはヴァルデミニカへ行くための扉ですよ。ヴァルデミニカはその先にあるのです。
ただ、このような形で生まれた、ヴァルデミニカへの扉は長くは持ちませんがね…。

では…Colossusには、もうひとはたらきして貰いましょう。」
そう言うと、魔王は気絶したColossusに手をかざした。
するとカオスのエネルギーが注ぎ込まれていった。
「ヴァルデミニカへ行くのは私だけで良い…。
フフフ…さようならです。」
魔王はそう言うと、ヴァルデミニカへのゲートに吸い込まれていった。
しかし、魔王は途中で止まった。
全員が不思議そうな顔をした。よく見ると、魔王の後ろにいつの間にか誰かが立っていて、魔王をがっちりと抑えていたのだ。
しばらくたって、ヒックイーノは自分の剣がなくなったのに気づき、ふとその人物の方を向いて言った。
「お前は… まさか…  剣にこんな力があったのか!」
そこで目覚めた久枝もその状況を見て驚愕した。
「ついに剣が覚醒したのか… 伝説は本当だったのか!」
「ミニカ村の守護神・ヒゲ男!なぜ、アナタが…!?」
魔王は普通に驚いていた。
「世界の危機だからな。守護神らしく守護するのも悪くはないだろう?」
ヒゲ男は魔王を抑えながら言った。
「そういう事を聞いているのではありません。いったいいつから魔剣に?」

「さぁ?」
そう言うとヒゲ男は魔王を地上へ突き落とした。
(ミニカ村の守護神だと…!
一体何者なんだ!!)
久枝は心の中で叫んでいた。
さっきまでヒックイーノが持っていた剣はヒゲのヒトが持っていた物と同じ「ヒゲ男の剣」のはず…。
ヒゲのヒトですら知らない隠された力があったと言う事になる。いや…長い年月のうちに失われてしまったということなのか。

どちらにしろ、久枝たちにとってチャンスなのは間違いなかった。
久枝は叫んだ。
「ヒックイーノ!!合体だ!」
すると、守護神は久枝の胸におもいっきり飛び込んだ。
ヒックイーノは全身から猛烈な光を発した。
「うおぉぉおをおぉぉ!!
魔王!
決着を付けようじゃないか!」
ヒックイーノは叫んだ。

(なっ、なんというカオスパワー。これが魔剣の真の力なのでしょうか…。)
魔王は落下しながらそう思った。
ドサッ
魔王は地面に落下した。

そのときヒックイーノの背後からColossusが襲いかかってきた。
しかし光を放つヒックイーノの体に触れる寸前でColossusは吹っ飛ばされてしまった。

その光景を見た魔王は、驚きとも笑いともとれるような表情で呟いた。
「これが…酸化ですか…!」
ヒックイーノを包む光が徐々に薄らいでいき、ヒックイーノの真の姿が現れようとしていた。
久枝は、現れた久枝の姿を見て驚いた。
「あ、あれは…!
ヒゲのヒトそっくりじゃないか!」
噂には聞いていたその姿は、まさに
その昔自分と戦ったころのヒゲのヒトに
瓜二つの格好をしていた。
そして、ヒックイーノは本能のままに叫んだ。
「サウザンド・ヒゲ・オブ・マスター!!」
ドゥオオオオオン!!
ズァキィイン!!
ゴゴゴゴゴゴ
光が広がり衝撃が世界中を駆け巡った…。
(なんて威力だ…。まだ地面が揺れている気がする。ハッ、魔王は倒したのか?ヒックイーノは無事なのか?)
「おーい!ヒックイーノ!生きてるかー!!」
久枝は叫んだ。
「ハァ…ハァ…なんとか…無事だ…。」
ヒックイーノは無事だったが、サウザンド・ヒゲ・オブ・マスターでカオスパワーを消耗したため、酸化状態から徐々に還元されていた。

ヒックイーノ達は辺りを見渡したが、魔王とColossusを見つける事はできなかった。
その時、外で大きな声が聞こえた。
ヒックイーノと久枝は慌てて耳を済ませた。
よく聞くと、Colossusの部下の声だった。
「全軍撤退!」
気づくと、周りにいた部下たちもいつの間にか姿を消していた。
「しまった!ヤツらの仲間が…。」久枝は焦った。
だが、
「待つんだ。」
ヒックイーノと合体していた守護神・ヒゲ男は合体を解除し言った。
「いいのか!?」
「リーダーを失った今、ヤツらは大した脅威にはならないだろう。それよりも大事なことがある。」
「…なんだ?」
「これは守護神のカンだが、あのヴァルデミニカへの扉はあと2日程で消滅するだろう。そして、アレを利用する以外にお前が元の時代に戻る方法はないんじゃないカナーって。」
守護神の言葉はもっともだった。
さすがヒゲ男の剣の守護神…何もかもお見通しというわけか。
「そうだ…俺は行かなくちゃいけない…」
ヒックイーノは事態が飲み込めなかったが、久枝の力強い言葉を聞いて、こう言った。
「後のことは、任せてくれ。」
2人は静かにうなずいた。
久枝は光の中に歩いて行った。
それを見届けると、守護神もいつの間にか消えていた。
ヒックイーノはしばらくの間、そこに立っていた。

一か月後、ヒックイーノはミニカ村の男衆を連れて
ヴァル軍の本拠地にいた。
ヴァル軍制圧のため立ち上がったヒックイーノは
賛同する周辺の反乱軍なども加わり
かなりの大所帯になっていた。
一方ヴァル軍はトップのColossusを失い
統制が取れなくなり
かつての無敵の軍隊の見る影もないほどにどんどん制圧されていった。
その後ヒックイーノは、ヴァル軍に戦う意志が無くなったのをのを確認し、話し合うことにした。
数カ月に及ぶ話し合いにより、今まで長く続いていた戦争は幕を閉じ新たな時代が始まったのだ。
そう、
この「ヴァル・デ・ミニカ」の地で…。

「俺が去った後のことは、ここのライブラリーで調べたことだ。
だから本当かはわからない。
だが、俺は信じたい。
彼らに平和が訪れたことを…。」
そして久枝は最後にこう言った。
「魔王とColossusはどうなったんだろうか…?」と。
後日、ヒックイーノは丘の上に立っていた。
その様子を、かつて戦ったヴァル軍、ミニカ軍の戦士たちが見つめている。
ヒックイーノは振り返ると静かに語りだした。
「我々が戦う時は終わった。これからは我々は未来に向けて手を取り合わなければならない。今ここに、ヴァル、ミニカ両国を合体させた新たな国、ヴァル・デ・ミニカを建国することをここに宣言する!」
それを聞いた市民たちは一斉に立ち上がり、拍手を送った。ヒックイーノは笑顔でそれをみていた。ナターリアは影でその様子を見ていた。これが、これから起こるヴァル・デ・ミニカの壮大な陰謀の始まりとも知らずに。

  • 最終更新:2011-01-05 21:43:47

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